激しくヌルいですが、R18です。
そしてその部分は短いです。










Kiss Me.

一人で眠るには広すぎるベッド。
居心地が悪くて寝返りを打った。

部屋の外に立つ護衛の気配が、過敏になった神経を逆立てる。
皇宮内の警護を強化したのは、皇帝の命を守るため。
理解していても、護衛全員にギアスがかかっているといっても、無防備に眠る気にはなれなかった。

もう一度、寝返りを打つ。ヴェロアの天蓋が視界を覆った。
身体だけでも休めるために目を閉じる。
風が、窓を鳴らした。


「無用心だね」

ぎしり、とベッドが軋む。
何ら驚くことはない。目を開ければ、目の前に黒い影があった。

「鍵、開いてたよ」
「開けておいたんだ」

窓からの訪問者は、不満そうに言う。

「毎晩たたき起こされるのは、ごめんだからな」

公的には死亡が発表された騎士は、城の中を歩けない。
だから入り口ではないところから、招いてもいないのにやってくる。
それこそ、毎晩。

「・・・嘘」
「何が」

頬に伸ばされた手を拒むことはしない。
間近に迫った緑の瞳は、底の見えない深さをしていた。

「眠れないくせに」
「っ・・・!」


反論を重ねる前に吐息が合わさる。
開きかけていた唇から、やすやすと侵入してくる。

「っ・・・、ふ・・・ぁ」

反射的に逃げそうになる舌を追いかけられて。
奪うように、それでも優しく。矛盾に満ちたリズムで絡み合う。

「ま、て・・・ス・・ザクっ」

息苦しさを訴えると、少し離れる。
上がった息を整えながら見上げると、するりと指が顎のラインを滑った。

「スザク・・・?」

身体の奥に灯った熱を誤魔化すように声をかける。
暗がりの中で、表情は見えない。

「・・・また、狙われたんだって?」

怒っているような、悲しそうな、戸惑っているような声だった。

「・・・誰から聞いた」
「C.C.だよ」

そのうち知れることだとは思っていた。別段、知らせることもないと思っていたのに。
姿の見えなかった魔女は、わざわざ伝えに行ったらしい。

「問題はない。ジェレミアが警護の増員を、」
「毒殺未遂だって聞いたけど、警護増やしてもしょうがないじゃないか」

言葉を遮って、さらに言い募る。

「咲世子さんまで牢に入れちゃって・・・ねえ、やっぱり、」
「不要だ。お前が俺の側にいることはない」

先手を取って否定を口にする。

「お前は死んだんだぞ。ふらふら出歩いてたらおかしいだろう」
「でも君が今死んだら、それこそ困るだろ」

感情の読めない声を出す。昔はもっとわかりやすいやつだったのに。
それでも言いたいことは大体わかってしまった。

「俺はまだ死なないさ」

寝る、とつぶやいて、ふいと視線をそらす。
だというのに、暖かい手が夜着の間を割って素肌を滑る。その感覚に身体の奥が疼いた。

「・・・おい、」
「まだ、眠れないだろ」

再び近づいた瞳の奥に、確かに情欲の炎を見た。



「っ・・・ふ、は・・・ぁっ!」
「ルルーシュ、」

そんな声で呼ぶな、と言ってやりたい。
行為の最中、聞いていないと思っているのか無意識なのか。時折、切なげな声で名を呼ぶ。

「・・・あっ、ん・・・」
「・・・ルルーシュ」

お互いに、言いたいことは知っている。けれど、言わない。
開いてしまった物語を、途中で終わらせることはできないから。


「や、ぁっ・・・ん!」

ふいに中心を握りこまれ、声が上がった。
思考を奪うかのように、激しく揺さぶられる。

「・・・言ってよ、ルルーシュ」

言わないよ、俺は

ずるり、と半ば引き抜かれたものが、再び奥まで突き入れられる。
跳ねて逃げそうになる身体を抱きこまれた。逃がさないとでも言うように。

「っ・・・側にいろって、言ってよ!!」

言えないよ、スザク


「あっ・・・ば、か・・・そ、こは・・・ああっ!!」

追い詰められていく。
今日も意識がとぶまで抱くつもりらしい。そうでなければ眠れないことを知っているから。

絞り出すような叫びから一転、名前を呼ぶ以外、スザクは何も言わない。
ただ、哀しそうな、つらそうな目をする。
目は口ほどにものを言う。お前たちの諺だろう?

「んんっ・・・も、やぁっ」
「ルルーシュ、」


そんな声で、呼ぶな


たらされる波の向こうでふと、仕舞い込んでいた感情が決壊するのを感じた。

「あ・・・っ」
「・・・どうしたの?」

封じていた涙がこぼれるのを見られたくなくて、少し強引にキスを強請る。

「す、ざく・・・」
「大丈夫だよ・・・」

目を閉じて、頬を滑り落ちる一滴を行為のせいにする。


なあ、スザク
俺にはまだ
お前に隠していることがあるんだ
最期まで隠し続けなければならないんだ

だからどうか
この涙の本当の意味を
お前が知ることのないように